布を染色される過程ではさまざまなトラブルや疑問が起こります。ここでは、よく寄せられるご質問と当店からの回答をまとめました。


Q.1
木綿の布をプロシオンM染料で刷毛で引染めをしたが、反応固着後の水洗で染料が多量に流れて色が思ったより薄くなってしまいました。

A.1
木綿の布は、多くの場合、製織過程で糊付けをして仕上げています。糊が残留したまま刷毛、筆などで染色を行うと、染料の種類に関わらず、染料の染着が悪く、水洗で多くの染料が未固着となって流出してしまい、濃度が上がらなくなります。でんぷん糊が残留していないかは、ヨードチンキを布につけてみて、青--紫--黒なら糊抜きが必要です。黄色なら不必要です。通常、糊抜き済みの布なら精錬は済んでいますが、念のため、水を布に落としてみて、水の吸収が遅いときは、念のために精錬も行った方が良いでしょう。反応染料の場合は特に、木綿の場合はシルケット加工済みの布が染色に適しています。これは木綿、麻に共通です。
また、反応染料は製造後、年月が経つと反応固着が悪くなってきます。メーカーから染料店サイドでは12ヶ月程度在庫をしているものもありますので、
購入後、3-4年経ったものは、濃色が染まりにくく、水洗時の脱落が多くなります。


Q.2
木綿の布に、手持ちの直接染料の濃い色を使って、筆で柄を描きましたが、塗った跡がそのまま残って、きれいに柄が描けません。縁に水がにじみ出しています。染料液も濁っています。

A.2
染料の溶解が悪く、染料液が水に分散出来ていないようです。濃度オーバーで溶解されているかもしれません。水100に5程度までの染料を溶解してください。もともと、溶解の悪い染料は手描き染めには不向きですが、濃度を薄く溶解して使用するか、染料溶解剤PMCを染料粉と等量併用して、溶解するとかなり改善されます。これは、直接染料、シリアス染料、酸性染料、含金属酸性染料に共通です。


Q.3
シルクの布に酸性染料の薄い色を使って、筆で柄を描こうとしましたが、布に当てた筆部分の跡がそのまま残り、周りには水がにじみ出してきました。その部分にもムラを消そうと筆で染料液を塗布しましたが、濃度が上がらず、結局、仕上がり後もムラはそのままでした。同じ染料液を濃く使ったときはこのようにはなりませんでした。染料液は濁らず、サラッとしています。

A.3
薄い染料液は、布への染まりつきが特に早くなりますので、均染剤を使用して染着を全体に遅くして染色します。染着が早いと、染料液が塗った跡がそのままで染着し、広がらず、周りに徐々に水のクマが出来てきます。水のクマの部分は水が既に存在するために、染料液を塗布してもなかなか入り込みません。その為に仕上がり後もムラが残ります。薄い染料液を手描き染め、引き染めするときは、アミラジンSDを加えて染色すると、全体に遅くそまりつき、水泣きが起こらなくなります。試験布に染料液をおとしてみて、30秒--1分程度で水のクマが出来ない程度までの最小限度のアミラジンSDを加えます。濃色は必要ありません。この場合、使用すると水洗で染料が多く流れることになります。直接染料、シリアス染料、酸性染料、含金属酸性染料に共通です。



Q.4
直接染料、シリアス染料、酸性染料、含金属酸性染料での、手描き染め、引き染めでの染料液をあまり濃く溶解しない方が良いと聞きましたが、どの位の濃度で溶解したらいいのでしょうか。染料の溶解の仕方も教えてください。

A.4
直接染料、シリアス染料、酸性染料、含金属酸性染料は実際使用される濃度で溶解されるのが一番です。濃く溶解されるときでも、水100に対して、染料3-5位にしておくのが無難です。溶解の良い酸性染料でも最大で水100に対して、染料10程度です。これでも実際に使用するときは3倍には水で希釈しなくてはなりません。直接、シリアス、含金属酸性染料は溶解がもともと良くない物が多いので、濃く使用しないで下さい。とんでもないムラが出ることがあります。これらの染料を溶解するときは、染料と染料溶解剤PMを等量づつと水を混合してから、常温の状態で加熱を始めます。強火は避けます。良く、攪拌しながら、時間をかけ、ゆっくりと加熱を続け、軽く、沸騰するまで続けます。染料を必要以上に加熱、沸騰させるのは避けてください。これらの染料は、水溶性ですから、要は完全に溶ければ良いということになります。更に、念のために、テトロンスクリーン紗#1200等で濾過する場合もあります。日にちが経つと溶解が落ちてきますので、注意します。