ミカシール染料

ミカシール染料はポリエステル、アセテート繊維を染色する染料です。

 ポリエステル繊維やアセテート繊維を浸染で染色するには、ミカシール染料、テラシール染料、カヤロン染料、スミカロン染料などの分散染料を使用します。浸染の方法には、キャリヤー染色法と高温染色法がありますが、ここでは、加熱温度が摂氏100℃までで済むキャリヤー染色法で染色します。この場合は、淡色から中濃色までの染色に限定されます。高温染色法は大掛かりな高温を発生させる装置などが必要ですので工場以外での染色は不可能です。
キャリヤー染色に向く染料は限定されますので、分散染料の全てがキャリヤー染色に使用できる適性があるわけではありません。当店のミカシール染料はキャリヤー染色に適した分散染料のみを選択した染料群です。染料そのものはテラシール染料、カヤロン染料、スミカロン染料、ミケトン染料の中から当店独自にキャリヤー染色に向く染料を選んでおりますので、品名の均一化のため、名称は当店独自のものになっています。

ミカシール染料によるキャリヤ併用の浸染

 染色に必要なもの


●ステンレス容器(布、糸の重量の30-50倍程度の水が入るもの)
●ガスコンロ(15-30リットル以上の水で染色する場合は中華料理などで使用する大型の2連-3連のガスコンロが必要)
●分散染料(ミカシール染料又はキャリヤー染色に適した分散染料)
●染料分散剤MK(染色浴中での染料の微粒子化、再凝集化防止促進剤)
●ミカキャリヤー(分散染料をポリエステル繊維やアセテート繊維に摂氏100度以下の温度で染色を可能にする助剤)
●酢酸90%(染色浴のPH調整剤)
●ハイドロコンク(ハイドロサルファイト、染色後の還元洗浄の工程で使用する還元剤)
●ノイゲンSS(染色後の還元洗浄の工程で使用する洗浄剤)又はサンクリンZ(染色後のソーピングの工程で使用する洗浄剤)
●ソーダ灰(染色後の還元洗浄の工程で使用するアルカリ剤)

染色浴の決定(染色するのに必要な水、染料、薬品)


●染浴(水)布や糸などの重量の20〜50倍の重量の水(淡色ほど多く濃色ほど少なく)
     例:100gの布を中色で染色するなら水は3,000g(3,000cc)必要
●ミカシール染料  淡 色:布や糸などの重量の0.5%程度(例:100gの布や糸なら0.5g必要)
          中濃色:布や糸などの重量の5%程度 (例:100gの布や糸なら5g必要)
●染料分散剤MK 染浴(水)の量1リットル当たり3cc
例:染浴(水)が3,000g(3リットル)なら9cc必要
●ミカキャリヤー 布や糸などの重量の20%
     例:100gの布や糸なら20g必要
●酢酸90%  染浴(水)の量1リットル当たり1cc
     例:染浴(水)が3,000g(3リットル)なら3cc必要

100gの布・糸に対する染料、染浴=水、助剤のおおよその目安
染色濃度 100gの布・糸に必要な

ミカシール染料

100gの布・糸に必要な

染浴(水)の量

100gの布・糸に必要な染料分散剤MKの量
100gの布・糸に必要なミカキャリヤーの量 100gの布・糸に必要な酢酸90%の量
淡色--布、糸の重量の0.5%の染料で0.5g 染浴の水の量は布、糸の重量の50倍で5リットル 15cc
20g
5cc
中色--布、糸の重量の1%の染料で1g 染浴の水の量は布、糸の重量の30倍で3リットル 9cc
20g
3cc
中濃色--布、糸の重量の5%の染料で5g 染浴の水の量は布、糸の重量の20倍で2リットル 6cc
20g
2cc

 染色工程


染料の分散

事前に染料を20倍程度の重さの摂氏50度位までの温湯で良く攪拌、分散します。
できれば電気ミキサーで分散、紗布等でろ過すると良いです。高温で溶解や加熱すると凝結してうまく分散できず難になります。


染  色

<1>事前に布や糸を水に漬け軽く絞って水を切っておきます。

<2>摂氏60度から染色を開始します。右図のA点で事前に決定した「染料分散剤MK」、「ミカキャリヤー」、「酢酸90%」を染色浴に入れ均一に攪拌し、そして染色する布や糸を染色浴に入れます。

<3>15分間、攪拌します。

<4>B点で分散しておいた染料を染色浴に加え、良く攪拌し、加熱し、30分で摂氏100度近くの沸騰域にします。
この間は攪拌を続けます。

<5>摂氏100度近くで60分から120分間以上、攪拌しながら染色を続けます。

<6>加熱を止め、20分かけて摂氏80度まで冷やします。染色物を引き上げ、洗浄工程を行います。

洗浄工程

<1>染色物を取り出し水道の流水で良く洗います。

<2>淡色や中色までの染色では次のソーピング処理を行います。右図のソーピング処理浴を作り10〜20分間、攪拌洗浄し、流水で良く洗い染色を終わります。

ソーピングの処理浴
処理浴の量 布、糸の重さの30倍の温湯
サンクリンZ 水1リットルに1〜3g
以上を60〜70℃にして使用します。


<3>中濃色以上で高堅牢度が必要な場合は、表面染着している染料等を除去する為に右図の還元洗浄の処理浴作り、還元洗浄を行います。処理浴を加熱し70〜80℃になれば、染色物を入れ、10分間、攪拌しながら処理をし、終われば、流水で良く洗い染色を終了します。


還元洗浄の処理浴
処理浴の量 布、糸の重さの30倍の温湯
ノイゲンSS 水1リットルに1g
ソーダ灰 水1リットルに1g
ハイドロコンク 水1リットルに2g
以上を70〜80℃で使用します。