絹織物(着物、ふくさ、高級服地など)を引き染めするためのシステム化された染料です。
 次のような優れた
特徴を持っています。

1--配合した染料が分離しないよう、染着速度、絹への親和性が良く似た特性の染料を選択してあります。特定の染料が引き染め時に分離して端に出てくることがなくなります。配合各色の分離による染めムラが防止できます。
2--
日光堅牢度の優れた染料(淡色で4級以上)の染料を選択しています。
3--
揮発水洗において溶解、脱落しない染料を選択しています。蝋やゴムノリを使用したものに最適です。

専用助剤

 通常の酸性染料と取り扱い、引き染め方法は同様ですが、助剤はできるだけ専用のものを使用します。

◇ハイパーソルブ 

 ハイパノール染料の溶解剤です。染料粉と同量を練り合わせ、水を投入して、軽く沸騰するまで、撹拌しながら加熱溶解します。

◇ハイパーゾールMO
 ハイパノール染料の均染剤です。淡色で3%、中色で1〜2%程度、使用します。

◇たてさし防止剤ハイパーレックス

 布の不具合による「たてさし」を大幅に防止、軽減します。但し、中色以上のダック友禅には不向きです。中色までは3%を染料液に添加します。

◇地入れ剤ハイパーKX

 ハイパノール染料を使用するときの事前の地入れ剤です。抱水性の優れた蛋白質と糊剤を使用、均染効果とスレの出にくい仕上がりになります。

 淡色から中色→30〜 60g (1リットルにつき)

 中色から濃色→60〜120g(1リットルにつき)

◇ハイパー糊305

 ハイパノール染料に混合して染料液に粘性をもたせる糊剤です。ふのりなどの糊と同様の効果を持たせます。

 淡色から中色→20〜50g (1リットルにつき)

 中色から濃色→40〜100g(1リットルにつき)

絹着物生地の引き染め 

 ハイパノール染料を使用して引染めを行います。絹の引き染め、特に着物生地の引き染めは天候、温度、湿度などの自然現象や、布の前処理、染料の溶解、染料の配合性、防染剤の状態によって、仕上がりの状態が大きく左右されますので、各工程を注意深く作業することが必要です。

「染色場所」
 温度は20〜25℃位、湿度は70%位に設定すると理想的です。日光の直接当たらない、空気の対流のない、室温が全体に均一な状態で染色します。

「布の前処理」

 精練された生地を伸子張りします。伸子は竹製またはグラスファイバー製のカギ針伸子が伸子アトが出なく美しく仕上がります。引き染め前に布の地入れを行っておきます。 中色から濃色になる地入れは後の染色に大きく影響してきますので、きっちりと処理しておきます。

水分をダブらせないように、かっちりと引いておきます。引き終わった後、裏面をカラ刷毛で十分に撫で返し、地入れ液を均一に、更に表を返して軽く全体を撫で返します。糊際や布の耳の部分に地入れ液が溜まっていれば、カラ刷毛で吸い取っておきます。
 伏せ糊が柔らかく塩分が出そうなときは、できるだけ短時間(1時間位)で乾燥してしまいますが、一般的には3〜4時間かけて乾燥します。地入れ液乾燥後の引き染めは淡色で、5〜6時間、濃色では24時間後に染色すると理想的です。

「調 色」
染料液を配合するときは希望する色相に一番近い染料を元にして混色していきます。反対色同士などの極端な配合(例えば赤と緑、黄色と青)はできるだけ避ける様にします。染料の染着性が異なり、染料が分離したときに布の中心部と耳端の色相が違って見えます。特にこれは鮮やかな色相ほど顕著になります。但し、他の染料と比較して、ハイパノール染料は大幅に染料同士の分離は減っています。調色後、
「ハイパー糊305を染料液1リットルにつき、次の量を加えておきます。 

淡色〜中 色 ・ 30〜50g

中色〜中濃色 ・ 50〜60g

濃 色    ・  80g

 染色する布の端に染料液を一滴落としてみて、染料の染着状態と地入れの効果を見ます。良好な場合は、水なきせず、あまり広がらず(塗った面積の1.3倍程度が良好)に吸着します。広がりすぎる時は「ハイパー糊305」を補います。
 染着が早すぎて、刷毛アトの出やすいときは塗布した染料の周りに徐々に水のクマが出来て水泣きしたり、配合した染料のうち、特定の染料が周囲に分離したりします。この場合は実際に布の端に染料液を塗布して見て、染着状態を見ながら「ハイパーゾールMO」を染料液1リットルに対して、淡色で30g、中色で10〜20gを目安に良好な状態まで加えます。
 必要以上に加えると染着が疎外され、染料が耳寄りして、布の中心部と布耳の部分の濃度が異なってきます。

「引き染め」 
 刷毛につける染料液は少なく、きっしりと、均一に確実に塗布することが肝心です。余分な染料液は染めムラや、耳寄りの原因です。
 一回の塗り面積の幅はおよそ、肩巾程度です。

粘度の高い染料液、ニュースタックFPNなどを使用するときは、前記の重ねの部分を縦に刷毛で擦ってやると段がでにくくなります。

 引き染めできると刷毛に染料液をつけないで全体を、更に裏側も撫で返します。これは2回程繰り返すと良好です。特に濃色の時は、ガスバーナーのあぶり台を移動しながら、極めて軽く、水分を蒸発させながら撫でかえします。あぶりすぎないように十分注意します。


「乾燥」
 日光の直接当たらない、また、空気の対流のない状態で、淡色で5〜6時間を、濃色では十分に時間をかけ(夕方から朝が理想的)乾燥します。乾燥が早すぎると染めムラ、耳寄りが出ることがあります。冬期においては乾燥途中に染色場の室温が5℃以下になるような時は異常な乾燥ムラが起こります。
 室温を調整するか、作業時間を考慮してそのような時間に乾燥時期がかからないようにします。