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ミカノール染料(酸性染料)での染色

手描き染め・・・引き染めへ・・・浸染へ

 数ある酸性染料の中から、均染性、溶解性の良好なものを集めた染料群です。すべて手描き染めに適しますが、「引染めに」マークの付いたものは選択性が厳しい絹着物の引き染めにも適しています。勿論、浸染、捺染にも使用できます。酸性染料ですので絹、羊毛、ナイロン、カプロン、皮革の染色に使用できます。

絹の手描き染め

 筆や刷毛で図柄模様を染色します。
 次の助剤を使用すると作業性の向上と良好な仕上がりになります。

○染料溶解剤PMC  ・ 染料溶解、分散性向上
○アミラジンSDN  ・ 染め足分離止剤
○泣き止め剤     ・ 染料液ニジミ防止
○LBニジミ止め剤  ・ 染料液ニジミ防止
○トメゾール     ・ 染料液ニジミ防止
○防腐剤DLP    ・ 染料液、防腐、防カビ
○サンクリンZ    ・ 白場汚染防止洗剤
○シルクフイックス3A・ 水洗堅牢度増進剤

◆染料の溶解

 染料と同量位の「染料溶解剤PMC」を練り合わせ、水、又は温湯を加えて良く撹拌しながら、少し沸騰するまで加熱溶解します。必要以上の加熱は避けます。濃色で保存されるときは水100に対して、染料は10%までにしておきます。(水1リットルに対して染料100g)染料を加熱溶解後に「染料溶解剤PMC」を加えても使用できます。同量を添加して下さい。保存には「防腐剤DLP」を0.5〜1%添加しておきます。
◆染 色
 染料液が冷えてから、必要な色に調色し染色、塗布します。その際。必要に応じて「泣き止め剤」などの糊剤、手描き友禅なら「染料液用練胡粉」そして、淡色で刷毛アトや配合染料の分離があるときには「アミラジンSDN」を加えておきます。
【参考】
 布に配合した染料液を一滴落してみて、しばらくすると水のクマが徐々に周囲にできる時、あるいは配合染料液が分離(輪の周囲と中の色目が違う)を起している場合には、
アミラジンSDNなどの均染剤の添加が必要です。但し、多すぎると染料液の吸収が疎外されて、塗った部分の縁ばかりが濃くなったり、また、水洗時の染料の脱落が多くなります。水泣きや色が分離しないところまで、少量ずつ添加して、効果を見ながら調整するのが理想的な均染剤の使い方です。淡色から中色は必要ですが濃色は必要ありません。 通常各染料の最高染着濃度は3〜4%です。ブラックのみ5〜8%必要です。
◆蒸 し
 染色後、乾燥してから40分間、蒸しをかけます。
◆水 洗
 「サンクリンZ」を5〜20・/リットルを加えた水で水洗し、未固着の余分の染料を洗い流し、その後、別の流水で色が出なくなるまで洗い、「シルクフイックス3A」で処理します。 柔軟加工が必要なときには「ハイソフト」で処理を行ないます。

絹着物・高級絹織物の引き染め 

 酸性染料、又は、ハイパノール染料を使用して引染めを行います。絹の引き染め、特に着物生地の引き染めは天候、温度、湿度などの自然現象やA布の前処理、染料の溶解、染料の配合性、防染剤の状態によって、仕上がりの状態が大きく左右されますので、各工程を注意深く作業することが必要です。

 染料については(引)マークのついた酸性染料を使用します。これらは溶解、配合性、伏せ糊の塩分、揮発水洗に対応した染料が選別してあります。 高堅牢度(特に耐光堅牢度)が要求される場合は含金属酸性染料が使用されますが、溶解、配合性、伏せ糊の塩分、揮発水洗に対して問題が多いので注意が必要です。耐光堅牢度が必要な場合は「引染用高堅牢度システム染料・ハイパノール」シリーズをおすすめします。
 当店推奨の引き染め処方には、
地入れを事前に行なう方法地入れを事前に行ない、特定の助剤で引き染めする方法と生地を水洗、湯通しして特定の助剤のみで引き染めする3つの方法があります。

地入れを事前に行なう方法
 次の助剤を使用します。
◆地入剤プロティンFB
  絹及び、木綿を酸性染料、直接染料で引き染め染色する前に布に塗布して、染料液の防染へのニジミ、乾燥ムラ等を防止します。引き染め染色前に次の液を塗布、乾燥して置きます。


 中色用地入れ液の構成(1リットル用)

   地入剤ミラスタックRA5   50〜80g

       水             1,000cc 

濃色になるほど、地入剤ミラスタックRA5を増やします。着物を1反地入するには約1.3リットル必要です。  


◆アミラジンSDN
 淡色から中色までの刷毛ムラ、色の分離の防止など染着ムラの防止に効果があります。
◆LC770
 水洗時に染料が多く流出しやすい濃色の染料に3%添加すると、染着が良くなり、脱落が防止出来ます。

「染色場所」

 温度は摂氏20〜25度位、湿度は70%位に設定すると理想的です。日光の直接当たらない、空気の対流のない、室温が全体に均一な状態で染色します。
「布の前処理」 精練された生地を伸子張りします。伸子は竹製またはグラスファイバー製のカギ針伸子が伸子アトが出なく美しく仕上がります。
 引き染め前に布の地入れを行っておきます。中色から濃色になる地入れは後の染色に大きく影響してきますので、きっちりと処理しておきます。
 水分をダブらせないように、かっちりと引いておきます。引き終わった後、裏面をカラ刷毛で十分に撫で返し、地入れ液を均一に、更に表を返して軽く全体を撫で返します。糊際や布の耳の部分に地入れ液が溜まっていれば、カラ刷毛で吸い取っておきます。
 伏せ糊が柔らかく塩分が出そうなときは、できるだけ短時間(1時間位)で乾燥してしまいますが、一般的には3〜4時間かけて乾燥します。地入れ液乾燥後の引き染めは淡色で、5〜6時間、濃色では24時間後に染色すると理想的です。
「調 色」
 染料は当店、酸性染料のうち、引染めに◎又は○印のついた染料を使用します。染料液を配合するときは希望する色相に一番近い染料を元にして混色していきます。反対色同士などの極端な配合(例えば赤と緑、黄色と青)はできるだけ避ける様にします。染料の染着性が異なり、染料が分離したときに布の中心部と耳端の色相が違って見えます。特にこれは鮮やかな色相ほど顕著になります。調色後、「地入れ剤プロティンFB」を染料液1・につき、次の量を加えておきます。 
淡色〜中色  30〜50g・・・中色〜中濃色 50〜60g・・・濃色 80g(型染め等で水性の防染剤を置いた場合は100g程度にします)

 染色する布の端に染料液を一滴落としてみて、染料の染着状態と地入れの効果を見ます。良好な場合は、水なきせず、あまり広がらず(塗った面積の1.3倍程度が良好)に吸着します。広がりすぎる時は「プロティンFB」を補います。

 染着が早すぎて、刷毛アトの出やすいときは塗布した染料の周りに徐々に水のクマが出来て水泣きしたり、配合した染料のうち、特定の染料が周囲に分離したりします。この場合は実際に布の端に染料液を塗布して見て、染着状態を見ながら「アミラジンSDN」を染料液1リットルに対して、淡色で30〜40g、中色で20〜30gを目安に良好な状態まで加えます。必要以上に加えると染着が疎外され、染料が耳寄りして、布の中心部と布耳の部分の濃度が異なってきます。
「引き染め
 刷毛につける染料液は少なく、きっしりと、均一に確実に塗布することが肝心です。余分な染料液は染めムラや、耳寄りの原因です。 一回の塗り面積の幅はおよそ、肩巾程度です。
《粘度の高い染料液、ニュースタックFPNなどを使用するときは、前記の重ねの部分を縦に刷毛で擦ってやると段がでにくい》
 引き染めできると刷毛に染料液をつけないで全体を、更に裏側も撫で返します。これは2回程繰り返すと良好です。特に中濃色〜濃色の時は、ガスバーナーのあぶり台を移動しながら、極めて軽く、水分を蒸発させながら撫でかえします。あぶりすぎないように十分注意します。
「乾燥」
 日光の直接当たらない、また、空気の対流のない状態で、淡色で5〜6時間を、濃色では十分に時間をかけ(夕方から朝が理想的)乾燥します。乾燥が早すぎると染めムラ、耳寄りが出ることがあります。

地入れを事前に行ない、特定の助剤で引き染めする方法・・・当店推奨

 前記の「地入れを事前に行なう方法」の半分程度の「地入れ剤プロティンFB」を地入れ液として使用し、乾燥後に、「ニュースタックFPN」を中色では、染料液の5%程度加えてから、引き染めします。濃色になるほど「ニュースタックFPN」を増やし、淡色になるほど減らします。この方法が現在、最もうまく引き染め出来る方法のようです。最近、とかく問題の「たてサシ」が出なく、かつ、耳寄りなどの乾燥ムラがでません。変わり織、鬼しぼ、つむぎ、刺繍生地は、特に推奨です。但し、ダックの引き染めは不得意です。

 濃色引染めの水洗時染料脱落防止


 酸性染料、含金属酸性染料を使用して、特に濃色を引染めした場合、蒸しを十分にかけても水洗時に、染料が多く脱落して、他の色の薄い部分まで汚染することがあります。これは白場汚染防止洗剤でも水洗のみ考えれば効果的です。
 LC770は酸性染料、含金属酸性染料を絹に対して、基本的な染料の物性から考慮したものであり、より染着性を高める効果を持ち、水洗時の濃度の低下も防止することが可能です。樹脂ではありませんので、布には安全です。濃色の脱落の防止におすすめします。
 調色された染料液   100

 LC770      3〜5
 を混合、通常通り引染めします。他の後処理も通常に処理します。

 着物地たてさし防止について

 
 近年、白生地の産地多様化によって染色時のトラブルも増加しています。
特に、引き染め染色の場合、染料の糸組織への浸透性が、浸染に比較して悪いため「たてさし」の問題が往々にしてでてきます。
 これは、主として、次の状態の「たて糸」に発生します。
◆特定の「たて糸」の張り(テンション)が他 の糸に比べて強かったり、弱かったりする
◆特定の「たて糸」の撚りが他の糸に比べて強 かったり、弱かったりする
 これらを引き染めすると、特定の「たて糸」の部分の染色濃度が薄かったり、濃くなったりします。
 浸染では、染色時に染浴の温度が高くなるので、染料の浸透性が良く、糸組織の芯まで染色されます。しかし、引き染めでは染色時の「地入れ」によって、糸への染料の浸透性が疎外され、糸表面の表面染着になります。これは「蒸し」によっても浸透性はほとんど向上しません。
 この浸透性の違いは「たてさし」のでる特定の「たて糸」と、他の「たて糸」との濃度の差となってでてきます。浸染にあまり目立たなく、引き染めに多く「たてさし」の出る理由の一つです。

 染料や糊剤から見ると、特に日光堅牢度の優れた染料(含金属酸性染料、高級酸性染料など)に「さし」が出やすく、酸性染料でも黒の染料の淡色から中濃色まで、赤、茶色などがでやすく、黄色、紫、ブルーなどは比較的「さし」は出ません。これは「さし」のでやすい染料は、染料分子が大きいので、浸透性が悪いためと思われます。この場合の浸透性アップには通常の「浸透剤」は効果なく、むしろ逆効果になります。また、「地入れ」をすると糸表面の染着になり、「さし」の判りやすい染色になります。残念ながら、現在のところ、すべての加工方法に完全な対処方法はありません。

 次の種類の引き染めには「ニュースタックFPN」を使用して、「たてさし」に対してかなりの程度まで対処できます。

◆のせ友禅の引き染め時に柄加工のない「無地 の引き染め」・「さし」は、ほぼ解消

◆ダック友禅の中色までの引き染め・「さし」 は、ほぼ解消

◆のり伏せの中色までの引き染め(通常の半分 位の地入れ併用)・「さし」防止率約 70%

 

絹・羊毛・ナイロンの浸染


 酸性染料を使用して浸染をおこないます。また、配合各色の染色時の吸収曲線が比較的、そろって希望の濃度になった時点で引き上げても色目の変化が少なく、日光堅牢度の優れた「ラナセット染料」も良好です。

必要な染料、染浴、助剤の決定


 染色物の重量を計り、水の量、染料の量、助剤の量を決定します。
下記は全て染色物重量に対しての計算になります。
  


水の量(染浴)   淡色から中色80倍〜50倍
          中色から濃色50倍〜40倍 淡色ほど多く、濃色ほど少なくします。 

  染料の量      淡色で0.1% 濃色で3%-5%くらいが目安

            特に真っ黒のブラックのみ5%必要

            例 .染色物重量1,000gなら淡色で1g 濃色で30g

       染料とほぼ同量の「染料溶解剤PMC」で練り、少量の温湯を加えて、溶解しておきます。


  酢酸       ⇒3〜8% 淡色ほど少なく、濃色ほど多くする

            例. 染色物重量1,000gなら淡色で30g 濃色で80g

  アミラジンL33  ⇒1〜3% 淡色ほど多く、濃色ほど少なくする

            例 染色物重量1,000gなら淡色で30g 中色で10g

  シルクニューロンA-2ー⇒染色物重量の2〜3%(釜スレ防止、風合い改良)


浸染染色法


 染色物を水に浸け込み、均一にしておきます。水の吸収の悪いときは
「ノイゲンP」を水1,000ccにつき2〜3g加えて浸しておきます。水を染色容器に取り、溶解しておいた染料とアミラジンL33」「シルクニューロンA-2」を加えます。
 染浴を加熱して、摂氏40度から布を入れ、撹拌しながら、30分位で沸騰させます。その間、数回に分けて
「酢酸」をいれます。

 30〜40分間、染めムラにならないよう、十分に撹拌しながら染色します。濃度が上がらず、色目が少し違うなどで染料を追加するときは、摂氏60度位まで温度を下げ、染料を追加します。吸収が悪く濃度が上がりにくいときは「酢酸」を追加して続けて染色します。 化学的には染料が全て布に染着した状態では染浴は透明に近くなります。

 希望の濃度になったら水洗します。摂氏30〜50度の温湯に「シルクフイックス3A」を2%加え溶解し、10〜15分間浸け込み軽く水洗して仕上げます。

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